「作業療法」とは何か、実際に何をするか、あまりはっきりとしていないイメージがあるかもしれません。ちょっと、複雑な概念です。
「作業療法」の「作業」とは、好きなこと、しなければいけないこと、仕事、日常生活などを指し、特に「その人にとって意味のある」ことであること、が重要とされています。単純な、反復動作ではなく、「意味や価値のある」作業を行うことが、人の人生を彩りのあるものにしています。
私たちは365日24時間作業を行っています。作業にはトイレや食事などの身の回りのこと、家事や仕事など生産的なこと、お祭に参加する、家族と過ごす、お稽古事を習うなどの余暇活動があります。一人一人の大切な作業―生活に欠かせない作業―は異なります。患者さまのやりたいこと、困っていること、ご家族に期待されていることが出来るように、一緒に考え、それができるように、支援をするのが作業療法です。
具体的には、まず、その方にとって何が大切な作業なのかを一緒に考える面接や目標設定を行います。その結果に基づいて、実際にトイレ、お風呂、食事などのADL活動や、買い物、洗濯、家事動作などのIADL活動を練習したり、趣味活動としての散歩、外出、手芸や読書などの機会を提供したり、仕事への復帰が必要となる方には実際の仕事場面の確認や練習などの復職支援などを行います。
たとえ入院中であっても、からだに障害があっても、その方の「大切な作業」をできるようにして、その「作業活動」を通して、その人らしい生活への復帰を促進するリハビリテーションが、作業療法です。
一人一人の大切な作業はその方が過ごしてきた人生のストーリーに沿っています。
当院の作業療法士はその方がどのような人生を送って来たのか、何を大切にしているのか、どの様な役割があるのかをお伺いし、一人一人に合わせたプログラムを検討します。例えば、地域のお祭を毎年楽しみにしている方が、病気によってお祭に参加できなくなると元気がなくなってしまいます。家族のためにお料理をされてきた方が出来なくなってしまうと、役割がなくなって無目的な生活に生きる意味を無くしてしまう危険もあります。
実際の作業療法では、実際の動作の練習(スキルや能力の向上)、やり方を変えたり、環境に働きかけ、目的の動作が行えるようにする(代償手段の検討)ことを行います。また、入院中の方には、病棟生活を過ごしながらも、可能な限りその人らしく過ごしていただけるよう、茶話会などの機会を提供したり、同じ手芸を行う方がまとまってお話をしながら時間をすごせるようにしたりすることで、入院されている方同士での交流を促進し、張り合いのある入院生活を過ごせるように支援しています。
それが、入院中の認知機能の減退を防ぐなどの意味も含め、退院後の社会参加につながり、その人らしい、生き生きした生活を取り戻していくことにつながれば、と考えています。
また、作業療法分野の学術的理論を日々研鑽し、「作業科学:OS」、「作業療法介入プロセスモデル:OTIPM」、「人間作業モデル:MOHO」、「カナダ作業遂行モデル:CMOP」などの理論を取り入れて、またそれらの理論に基づく「ADOC」や「AMPS」、「COPM」などの作業療法遂行ツールを使用しながら、日々の業務に取り組んでいます。