台東区看護部長会 教育担当者主催『認知症ケア研修』
台東区の病院の看護部長が連携して運営している看護部長会所属の、各病院の教育担当者が主催する研修会として、10月31日に当院にて、認知症ケア研修会が開催されました。
今回は、ー身体拘束最小化を目指してー「認知症やせん妄の人の世界を知る」~その人中心の看護の実現に向けて~と題し、永寿総合病院・台東区立台東病院の認知症看護認定看護師のお話しを伺いながら、身体拘束をしない看護実践を行うために私たちが明日からできる認知症患者さんへのケアについて考えました。多くの皆様にご参加いただき、誠にありがとうございました。
まずは看護師として、認知症患者さんとの普段の関わりを考えるところからスタートしました。
忙しいと目先の業務に手一杯になってしまい、患者さんをすぐに否定してしまいがちだったことに気づかされました。
認知症ではない患者さんは疾患、治療を受け入れ「患者さん」になることができますが、認知症患者さんは治療を受け入れられず、「患者さん」になりきれていない状態なので、認知症の数々の症状は、認知症という病気の症状であることを理解することが大切です。何故そういった行動をしているのか、中核症状と周辺症状を分けてアセスメントし、理解することが必要になります。
また、認知症になっても「感情」や「自尊心」は残ることから、本人が嫌がるケアをしようとすると突然怒りだしたり抵抗したりするのは、自分に残された機能を最大限に活用し、意思を表現しているということになります。
そのような点からも、当たり前に見えることでも「できた」を実感できる成功体験は、たとえ一過性でも喜び・自信に繋げることができると学びました。
認知症看護については、その人中心のケアという意味である「パーソンセンタードケア」という考え方が大切です。
そのなかでも、パーソンフッド、一人の人として受け入れられ、尊重することが重要になってきます。
ここでは、具体的な方法のひとつである、人間性を重視し視点をその人に向ける2STEPについて学びました。
同じような症状に見えても、認知症ではなく「せん妄」の場合があります。
認知症は、ゆっくり長い時間をかけて進んでいきますが、せん妄は体調や環境が急に変わることで、突然時間や場所がわからなくなったりします。
認知症高齢者のせん妄時は、環境・治療が変わる前のリアリティオリエンテーションが大切です。相手を尊重し、受容的に、統一した方法で関わることの大切さを学びました。
身体拘束が行われると、患者さんには良くない影響が多く起こります。身体拘束を出来るだけ減らすために、先回りした行動を取るためのポイントを勉強しました。
例えば患者さんは、起きる・食べる・排泄する・清潔を保つ・活動する、のような基本的ケアが行われていると、比較的安定した状態でいられるという点から、身体拘束を検討する前に、ケアの仕方を見直してみる事が大切だと感じました。
また、拘束に繋がる問題行動などの背景に対処し、働きかけるケアを実施するために、コミュニケーションの見直し・安全安心安楽を提供するケア・残存機能を活かし生活リズムを整えるケアなどが大切なポイントになることも学びました。
最後に実施された、認知症ケアについて他病院の看護師の方々と一緒に考えるグループワークを通して、様々な方と意見交換をすることができとても良い時間となりました。
私たちは看護側の問題ばかり考えがちですが、『患者さんにとっての問題』を考え、入院前の環境と現在の状態を考察し、患者さんの症状を改善する糸口を見いだせるようにしていこうと思いました。